1999年9月

 とうとうやってしまいました。
 私は若い頃、お店の中や電車の中で大声で子どもを叱り、ましてや人前で子どもをひっぱたく母親の姿を軽蔑していました。「なにも人前であんな事までしなくてもいいのに」って。
 でも私も二男潤をひっぱたいてしまいました。休日の夕方、けっこうこみあう八王子のヨドバシカメラの店内で。
 最近潤は気に入らない事や自分の思い通りにならない事があると、服を脱いでしまう悪癖があります。家の中でならまだしも、外でそれをやられると・・・。
 その日も、潤のしたかった事を止めると急にTシャツを脱ぎだしたので、片手に夏菜を抱きながらそれを阻止するためには他に方法がなくて、ピシャンとやってしまいました。でもいつもは長泣きする潤が、やっぱりまずかったと思ったのか、ちょっと泣くとすぐ泣き止んだので助かりましたが。
 この事、住職にも話せなかったのは、後ろめたかったからでしょうか。でも私は今でも分かりません。又同じ事があった時、今度はどうすればいいのか。私はどうするのか。
 
 新聞やテレビを賑わせている二〇〇〇年問題も、九が並ぶ一九九九年九月九日も、カーナビが使えなくなっちゃったあの日も、毎日、子どもたちを追っかけ回しているだけの私には、関係ないと思っていました。でもそうでもなかったんです。
 私の携帯電話はそうとう旧式です。なにしろ住職のお下がりですから。重いし、すぐにバッテリーが切れちゃうし。
 それがとうとう調子が悪くなって、買い換えようと夏菜を連れて八王子駅前に出掛けたのが九月十日。
 お店を覗くと誰もいないし、何か変。しばらく待つと奥から人が出て来て、九十九年九月九日の影響でコンピューターが動かなくなって何も出来ないから出直してくれって。
 関係ないと思っていたから気にも留めていなかったので、思わぬくたびれもうけ。でも、この分じゃ二〇〇〇年に年が変わるときって案外身近なところに支障がでるかもしれません。怖いような楽しみのような。
 そう、二〇〇〇年と言えば、吉田拓郎がこの十一月に「二〇世紀の打ち上げパーティー」というコンサートをやるとラジオで宣伝しているけど、二〇世紀って二〇〇〇年末までですよね。今から打ち上げちゃ早すぎるって誰か言ってあげなかったのかな。

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