1993年12月

 顕が生まれて 五カ月。まさしく あっと言う間でした。
 住職の言うところの「彼はまだ この世になれていないんだよ」状態だった生まれてからの一ヵ月。夜も昼も関係なく びいびいよく泣いて おっぱいとおむつで 一日が終わってしまって。
 それが「夜は寝るもの」と理解した時から ぐっと楽になって。
 まだまだ子育てを楽しむ余裕はありませんが 少しずつ面白さのわかってきた今日この頃です。
        ☆
 今回は 猫のトムちゃんと顕の話。
 顕が生まれるとわかった時 ずいぶんいろいろな方から ご心配いただきました。トムちゃんに気をつけてね、猫はやきもちを焼くからね、ミルクの匂いがするから噛みつくかも、暖かいから顔の上に乗って窒息させるかも等々。でも まったく心配はいりませんでした。
 顕が生まれる前は 朝のお勤めの時トムはいつも私の膝の上にいました。
 でも顕が帰ってきた翌朝、トムがいつものように私のところに来ると すでに顕が。すべてを悟ったトムは 二三歩あるいて振り返り また二三歩あるいて振り返り 背中を向けて少し離れた所に座ってしまいました。その背中は少し寂しそうで かわいそうになってしまいました。
 それからのトムはいつも遠慮がちでしょんぼりしていて。
 ごはんが欲しい時も 以前はうるさいほど催促したのに 側に来て「にゃあ」と一声、あとはからのお皿を見つめているだけ。なんともいじらしいというか なんというか。
 報恩講の後 顕をつれて実家に三日ほど帰っていた時、トムは住職に そりゃあべたべたとあまったれていたそうです。
「トムはやさしくて 頭のいい子だから全部わかってがまんしているんだね」と、みんなで言っています。
 今、顕は書斎でワ−プロを打つ住職の背中でぐっすり、トムも膝でぐっすり。
 トム、そんな風にしていられるのは今のうちだけだからね、顕がハイハイしだしたら おちおち寝ていられないからね、しっぽはひっぱられる 背中はたたかれる ごはんだって食べられちゃうかも。そうなってもトム、顕をよろしくね。

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