1993年10月

 一九九三年七月十四日 午前〇:二〇 体重三九一〇g 身長五三cmの 大きな大きな 住職にそっくりな男の子が生まれました。
 けっして若くない母体、お医者様でさえ『見込み違いだった』とおっしゃったほどの でかすぎた子(超音波写真を撮っていた九ヵ月まで 標準に満たない子でした)、そして母親のカンの悪さ(どうしても うまくイキム事ができませんでした。安産教室で あんなに練習したのに!)。
 これだけそろえば しょうがないけど難産のすえ生まれた我が子は、仮死状態で なかなか産声をあげてくれずに 先生は『たった一分』とおっしゃいますが 私には一〇分にも二〇分にも感じられるほどの長い間、もうろうとした状態で ベソをかきながら『先生、先生』と叫んでいたような気がします。
 初めて聞いた我が子の声は、低くて 弱々しくて 年とったドラネコのような声でした。
 名前は、『松本 顕』そのまま『けん』と、読みます。
 命名者は、父親である 住職。
『物事を あきらかにする』という意味だそうです。
 けっして 偉い人になってくれなくてもいい。
『あなたに 出会えて良かった』と言ってくれる人が たった一人でいいからいてくれるような そんな人になってください。
 あなたが生まれてから 涙腺の壊れてしまった新米ママは かたわらで 夜昼を間違えてしまったようにぐっすりと寝ているあなたを見ながら また かってに涙がこぼれてきます。
 心配してくださった方々、ありがとうございました。力を貸してくださった方々、ありがとうございました。なんとか 無事に 生まれてきてくれました。
 新米ママは、新米父さんと 力をあわせて のんびり マイペースで がんばっていきます。
      (一九九三・七・二六)
    ╋    ╋    ╋
 これは 出産後十日目位に まだ気持ちも体も 不安定な状態の時に書いたものです。
 今となっては ちょっと生々しくて 気恥ずかしいですが そのまま載せてしまう事にしました。
 おかげさまで すくすくと育っている我が子の側で 少しは私も成長せねばと思っている今日この頃です

坊守日誌 INDEX