1993年3月

 朝晩は まだまだ冷え込むのに、日中の暖かさは まさしく春。まったく 春眠 暁を覚えないで 困ってしまいます。トムといっしょに ひなたぼっこをしていると 本当に 猫になってしまいそうで。
 
 ご報告があります。赤ちゃん できました。予定日は、7/15。東京のお盆の最後の日です。
『なんとまあ お寺の赤ちゃんらしいこと。』と、何人もの人に 笑われてしまいました。私としては、お盆の直前に産んで お盆の最中は 病院のベットの上で過ごす なんて 怠け者の ずるい事を たくらんでいますが、延立寺の母の言うように お盆のお客様のお参りが あらかた終わった頃 生まれてくるんじゃないかと そんな気もしています。だって 初産は 遅れるっていいますものね。大きなおなかを抱えて 暑いお盆を 過ごす なんて ちょっと考えたくないですネ。

 話は、逆上って まだ妊娠3ヵ月の頃。
 その日は、ちょっと風邪気味だったので 休んでいました。だるいし 吐き気もするし。でも つわりだろうと 思っていたのです。
 ところが 夜になると 右の脇腹が痛くなってきたのです。それでも私は、風邪だと思っていました。
 あいにくと 祭日の夜。ねんのためと思って 産婦人科の先生に 電話をすると、先生も ねんのためと言って、『内科の救急病院で 診察を受けなさい。祭日の夜だから 救急車を呼んだほうが いい』と。
 住職さんは、なんともきまり悪いような 情け無いような顔をしながら ちょうど いあわせた友人夫妻に 救急車を呼んだことを つげたそうです。
 ほどなく 派手なサイレンを鳴らしながら 到着した救急車に 隣の奥さんまで 心配してきてしまいました。心配そうな母と、トムと、友人夫妻と、隣の奥さんに見送られて 病院に着くと 早速診察。
 診察をした先生は、あっさりと『盲腸かもしれないので 入院してください。』と。
 エ−ッ、盲腸。なんで こんな時期に。その晩は、さすがに 痛さと 赤ちゃんの事を考えると 病院のベットの上で眠れませんでした。
 翌朝から検査、薬は使えないので 栄養剤の点滴。住職さんの留守に 母をパニックに陥らせた 病院からの呼び出し、たいした内容じゃなかったんですけどネ。
 結局 痛みは 勝手に引いてくれて 検査の結果も 『盲腸らしい』ということ以上 わからないままに 退院してきたのですが、まったく 人騒がせな話です。今じゃ なんともなくて 母子?とも 元気いっぱいで お寺中を 走り回っていますが、あの時は あちこちに ご心配とご迷惑を かけてしまいました。
 でも 笑ってしまうのは、あの騒ぎを 診察した救急病院の医者以外は、盲腸とは思っていない事。もちろん私自身も。『人騒がせな あなたらしいネ。』と言った友人の言葉が、一番的を得ているようです。住職さんの 『まったく もう』という声が、どこからか 聞こえてきそうでした。

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