2013年12月

 二男潤の就職が決まりました。
 特別支援学校に通う高校三年生。知的障害のしる自閉症児。
 企業就労は大変だってさんざん聞かされてきた。先生からも先輩の親からも。だから三年前長女夏菜を中学受験させて、高校受験をしなくていいように準備して、今年一年は身も心も潤のために空けるつもりだった。
 でも、なかなか予定通りには進まなくて、築地本願寺へしばしば通わなくてはならない役目が回ってきて、ちょっとまいったな、ではあったのだけど。
 六月、親子ではりきって、一回目の実習に通った。なかなか良い手応えだと思ったのは私だけ。散々の結果を渡された。
 私の今までの子育てを全否定されてるような結果に、私がボロボロになった。心が折れた。もういい。潤はずっと手元にもいて寺の草むしりをさせておくとまで思った。
 でも先生たちは違った。
 一回目の結果が出た時点で、もう次の実習先を見つけてくださっていた。
「前回は潤君にあわなかっただけです。あの結果は気にすることはありません。落すための結果ですから」と。
 がんばって保護者会に出てみれば、ボロボロの親が何人もいた。
「うちはこう言われた」「うちの子はこんなこと言われた」
親たちが出しあった結果は、企業の言うことをクリアしている子は特別支援学校にはいないということ。
 うちの子たちが悪いわけじゃないんだよね。だって出来ないから特別支援に通っているんだものと大笑いして、みんなで復活して帰っていった。
 夏休み明けに二回目の実習。潤も楽しそうだった。
 ほどなくして「継続」の結果。
 先生と一緒に、もぐら叩きのように指摘された課題をつぶしていった。
「体力が無いわけではないのに、コピー用紙をまとめて持てない」
「エプロンのひもを後ろで結べない」
「四角いゴミ袋が上手に結べない」
一つ一つクリアしていく中で、潤も自信が持てたようだ。
 改めて行った実習で内定をいただいた。親子で飛び上がるほど喜んだ。
 私もちょっとだけ肩の荷が軽くなるような気がした。 ♪    ♪    ♪  
障害児の就労はまだまだ、えっというような事がいっぱいです。内定が出てから求人票を見せられるとか。先生方が皆喜んでくださる就職でもお給料だけではひとり立ちできそうもないこととか。
 潤の教室の壁に貼ってあります。「就労決めて笑って卒業しよう」まだ三学期にあらためて実習に行く子もいるようです。みんなみんながんばっているのに。
 本当にみんなそろって笑顔で卒業できるといいのに。
 春、潤はスーツを着て社会人になります。ご心配くださった皆さま、ありがとうございました。(直子)

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