2010年12月

 年の暮れになって嬉しいことがありました。
 彼女と出会ったのは、潤のクラスメートのママ友として。潤が中一の時、高校生と中学生と小学生の三人の子を持つシングルマザーで、仕事も学校のこともがんばっている明るい人。
 それが去年の四月、いっしょに出席するはずだったPTAの会議にいつまで待っても来ないのでケータイに電話すると、出られたのはお母さま。「娘は出先で倒れて、意識不明のままです」とのこと。
 え、何が起こったの。ぜんぜん状況が分かりませんでした。しばらくして、先生を通して伝わってきたことは、脳出血で倒れて一週間くらいで意識だけは戻ったけれど、しゃべれないし寝たきりということ。家族の意向でお見舞いにはこないでほしいということ。
 それから一年八ヶ月。時々聞こえてくるのは、転院したらしいとか、リハビリがんばっているとか、少しずつ話ができるようになっているとか。
 でももう会えないだろうなと思いながらもケータイに入っている彼女のアドレスを消せずにいました。
 それが十二日のこと。夕食の支度をしているとメールが。送り主は彼女。え、なぜ彼女からメールが来るの?潤のクラスメートである娘からかと思って「Aちゃん?」とメールを送ると、しばらくして「お母さんです」と。びっくりして保護者会で何度かお目にかかっているお祖父さんに電話をすると、「最近がんばって練習しているようですよ」とのこと。あわててメールを返すと、「今度の親睦会、出席します」と。
 当日、首を長くして待っていると、高校生のお兄ちゃんに付き添われて車椅子でやってきました。右足は使えないけれど左足で軽く床を蹴って、自分で進んでいます。右手は使えないけれど、左手でちゃんとお箸も使っていました。
 すごい、すごい、すごい。ここまでくるのに、どれだけ彼女と彼女の家族の涙と努力があったのか。一年八ヶ月、長かったけれど、先はまだ長いけれど、とりあえず笑顔が帰ってきました。三月の卒業式は出席すると言う彼女と、またメールするねと別れたのですが、こちらの方がいっぱいパワーをもらった師走の一日でした。(直子)

坊守日誌 INDEX


HOME