2004年3月

 ごめんなさい。今回も潤の話を書かせてください。
 ご存知のように潤は自閉症児。みんなと同じようにできる事とできない事があります。
 二年生の最後の生活科の課題として出された「自分のアルバム作り」は潤のような子にとって、一番ニガテとする事です。
 両親から自分が生まれた時の話を聞き、名前の由来を聞き、小さかった時はどんなだったとか、思い出の品々とか、それらをまとめて絵や作文でつづられるはずのアルバム。潤にははなから無理なこと。
 ある日の授業。まだ計算ドリルや漢字ドリルが仕上がっていない子はドリルをやり、終ってしまった子はアルバム作りにはげんでいたそうです。先生はドリルの終っていない子の採点をしていました。
 アルバム作りまでみんな終ってしまった何人かが潤のアルバム作りを手伝っていました。最初は手伝っていたのが、しばらくして先生が気づいた時には何人かがアルバムへ潤の代わりに書いてしまっていました。それも、子ども達は子ども達なりに考えて、どうすれば潤が書いたようになるかと思い、左手で書いたというのです。先生は出来上がった潤のアルバムを見て愕然としてしまったとおっしゃっていました。子ども達に悪気は無いのです。潤をバカにしたわけでもないのです。潤の毎日を知っている友達が、潤のために考えた事だったのです。
 最後の保護者会の日、お礼を言いに行った私に、困ったように話をしてくださった先生に、申し訳ないのですが私は吹き出してしまいました。
「子ども達はよく見ているなー」と。
「潤と潤のお友達の合作としてありがたく受け取らせていただきます」と先生に申し上げると、心の底からホッとしたような笑顔で「お母さんがそういう方だから潤くんがみんなにかわいがられるような子に育ったんですよ」と私まで褒めていただいてしまいました。
 お友達に守られて、助けられて、学校生活を送れる潤は幸せ者です。時々トラブルもあるけれど、大人がびっくりしちゃう事もあるけれど、それでも朝、「お兄ちゃん時間ですよ」という潤の声を聞くと、「学校好きなんだよねー」と思います。
 四月になると、長男顕が五年生、次男潤が三年生、そして長女夏菜が幼稚園最後の年長さんになります。長男の時から数えて切れ目無く通い続けて八年目、私にとっても最後の幼稚園生活の年となります。どの子にとってもその年は一回きりなのです。親子でせいいっぱい楽しみましょうか。

(直子)

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