2000年2月
「ありがとう いつもいっしょに いてくれて」
一月十一日に延立寺の猫トムが永眠しました。
十六歳と十ヶ月という年齢はシャム猫にしては獣医さんもびっくりするくらいの長命だったようですが、いつもいたものがいなくなるというのは、悲しいというよりもさびしく、ものたりないような感じです。
冒頭の川柳(?)はポケモン川柳の影響でやたら「ここで一句」にこっている長男顕がトムに贈った作品です。
以前インタビューを受けたことのある『寺と生活』というお寺向けの月刊誌から、「連載エッセーを書いてみないか」とお誘いを受けました。え、坊守直子さん、作家デビュー?なんか、ドキドキ、ワクワク、ウキウキ。他人に自分を認めてもらったような気がして、すごくうれしかったです。
でも断ってしまいました。手のかかる子どもが三人もいて、いちおう主婦で、いちおう寺の坊守で。気持ちのゆとりも時間もネタもありそうにありませんから。
この短い坊守日誌ですら、何度も何度も住職にせっつかれて、なんとか書いても住職のダメ出しが出て、また書き直してなんて。でも子どもたち中心の生活の中で、なんかちょっとだけ、自分がいたような気がして。久々に心がときめいてしまいました。
ただちょっと悔しいのは、担当者が「そんな簡単に断らないで、ちょっと住職にも相談して考えてみてくださいよ」なんて調子のいいこと言ったくせに、それっきりだということ。もう一回くらい電話があってもいいんじゃないですか。やっぱり断りますけど。
先日、長女夏菜とひなたぼっこをしていると、庭の植え込みを登ってくるケモノが一匹。猫にしちゃ大きいし、犬にしちゃ毛並みがいいし。何だと見ていると なんとタヌキ。野性のタヌキが庭に遊びに来たようで、あらためて「延立寺って山寺なんだな」と思ってしまいました。
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